人間とAIの脳の違い
「AIと人間の脳の仕組み」、つまり、回答するための処理過程はどのように違うのでしょうか。もちろんAIは、脳という有機的な仕組みで動いているわけではありませんし、自律的に意思を持っているわけではありません(今のところは)。
ただ、プログラムのような機械的な回答ではなく、人間のように思考し、臨機応変に応答できるというのは、何らかの人間の脳に似た仕組みがあるからです。AIも出てきたばかりの頃は、臨機応変な応答が苦手でした。しかし、推論モデル(reasoning model)の登場により、人間のように段階的に思考するようになりました。
それに伴い、「困ったことはなんでもAIに相談する」という人も増えてきました。AIの回答はほとんど人間に近づいています。しかし、そもそも人間とAIにおいて、その処理過程に大きな違いはないのでしょうか?
「学ぶ」仕組みは似ている
AIの基盤技術であるニューラルネットワーク(ANN)は、人間の脳にある神経細胞(ニューロン)が電気信号を伝達する仕組みを模倣したものです。
ニューロン同士の結びつきの強さを調整することで学習するという点は、人間の脳もAIも同じ原理に基づいています。
人間が生まれてから無意識に外の世界の情報を取り込んで脳内で処理するプロセスは、AIが膨大なデータを入力して行う「学習」と本質的に似ています。
人間は、外の世界に対して五感で接することで情報を得て学習していきますが、AIは入力されたデータをトレーニングすることで様々なことを学習します。
機械学習と脳科学の視点でいうと、現在のAIが用いるANN(人工ニューラルネットワーク)が、「誤差を減らすために外から定義した目的関数に従って重みを調整する数理モデル」であるのに対し、人間の脳は「身体と環境の中で、自律的に活動しながら局所的かつ継続的に学ぶ生体システム」という違いがあり、これが人間の学習とAIの学習の違いです。
ニューラルネットワークは脳に着想を得ていますが、実体は単純化した人工ニューロンを層状に並べて重みとバイアスを学習する仕組みです。
ですので、厳密には、脳そのものの再現ではありません。仕組みに似せたというほうが正しいでしょう。
ただ、脳そのものの再現ではないからといって、私たち人間が行っている「学習」自体を、別のアプローチで再現することができないという意味ではありません。
つまり、「学ぶ仕組みや使用するリソースに違いはあるが、出てくる結果は同じになる」という可能性があります。AIの出力が様々な分野で専門家と同等レベルになった背景には、有機的なシステムを再現することで似たような結果が得られようになったからです。
効率の違い
人間の脳は、体重の約2%しか占めないのに、エネルギーの約20%を使い、全体として「20Wの電球」になぞらえられる程度の電力で動作すると報告されているそうです。
(https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2816633/)
それでも脳は、知覚・記憶・学習を常時並行してこなしながら、新しい情報への適応も続けます。
対して現在のAIは、高性能ではあるものの、大量データの反復学習と大きな計算資源に強く依存しています。この観点からみると、現在のAIと脳とでは、人間の脳のほうが効率的と考えることができます。
AIが消費するエネルギーは膨大であり、学習にも計算にも大量なデータが必要になります。ビックテック企業を中心に、世界中の企業がデータセンターに巨額投資を行っています。それに伴い、メモリ各社がPCに使用されていたDRAMメモリを、より利益率の高いAI向けに振り向けたことで、半導体メモリー不足と価格高騰を引き起こしています。

国際エネルギー機関(IEA)は人工知能(AI)の普及によりデータセンターのエネルギー需要が前例のないほど増加しているとのことです。データセンターは2030年までの総需要増加分の20%以上を占めると予測されています。
Global data center power demand to double by 2030 on AI surge: IEA | S&P Global
もちろん脳の効率性と現代のAIを単純に比較し、最終的にどちらが効率的かを結論づけるのは適切ではありません。なぜならAIの処理性能は日々進化しているからです。技術の進歩によって必要なエネルギーの量は減少し、高性能化します。
AIのほうが、人間の脳よりもエネルギー効率が良くなるのは、時間の問題かもしれません。その証拠に、AIの計算に必要なリソースは日々減少していて、最近でもgoogleが新たなデータ圧縮技術「TurboQuant」を発表しました。
これは従来AIで使用される推論速度を最大8倍に向上させつつ、モデルの精度低下をゼロに抑えるメモリー消費量の圧縮を可能とする技術だそうです。効率性の観点で言えば、技術進歩とともに人間の脳により効率的になるのは案外早いのかもしれません。
グーグル「TurboQuant」技術、AIのメモリー消費を6分の1に圧縮──メモリー市場は縮小か拡大か | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
まとめ
今回はAIと人間の学ぶ仕組みや効率性の違いについてまとめました。このほかにも、人間の処理プロセスとAIの処理プロセスの違いは様々です。ただしAIはうまく使えば私たちのビジネスを効率化し課題を解決することができます。
不確実性が高く変化の早い世界において、AIの登場は、さらにそれを加速させました。これからさらにAIの重要性は増してくるでしょう。AIを業務活用していない方、うまくビジネスに活用できていない方は、導入を急ぐべきです。